横浜地方裁判所 昭和61年(ヨ)213号
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別紙当事者目録記載のとおり
主文
本件申請をいずれも却下する。
申請費用は債権者らの負担とする。
理由
一 申立
1 債権者ら
(一) 債務者の債権者らに対する別紙「事前通知書一覧表」(略)記載の発令文通りの昭和六一年三月三日付け発令通知の意思表示(以下「本件各配転命令」という。)の効力を仮に停止する。
(二) 申請費用は債務者の負担とする。
2 債務者
主文と同旨
二 当裁判所の判断
1 債務者が日本国有鉄道法に基づいて設立された公共企業体であること、債権者らが別紙「経歴一覧表」(略)記載のとおり債務者に採用され、本件各配転命令発令当時いずれも債務者東神奈川電車区に勤務し、同表債権者番号1ないし3の各債権者は技術管理室、同4ないし10の各債権者は機動検査班グループ、同11ないし28の各債権者は本区仕業検査、同29ないし34の各債権者は磯子派出所、同35ないし40の各債権者は橋本派出所、同41、42の各債権者は八王子派出所、同43、44の各債権者は本郷台派出所の各業務に従事していたこと、債権者らがいずれも債務者に雇用されている職員等で組織する国鉄労働組合(以下「国労」という。)の組合員であり、国労東京地方本部(以下「東京地本」という。)横浜支部東神奈川電車区分会(以下「分会」という。)に所属していることは当事者間に争いがない。
2 債務者は、昭和六一年二月二四日付けで債権者らに対し別紙「事前通知書一覧表」記載のとおり債権者らの配転に関する事前通知をし、同年三月三日付けで債権者らに対し右事前通知に基づく発令通知(本件各配転命令)を交付したことは当事者間に争いがないところ、一件記録によると、債務者が本件各配転命令を発するに至ったのは、昭和六一年三月のダイヤ改正における電車検査周期の延伸あるいは電車運用改正等により従前の電車検修業務量に変動が生じることになったため、検修業務の効率化を企図して、東神奈川電車区においても技術管理室、機動検査班グループ、本区仕業検査、磯子派出所の業務を蒲田電車区へ移管し、同橋本派出所及び八王子派出所の業務を八王子機関区へ移管し、さらに同本郷台派出所を廃止することに伴う措置であることが一応認められる。
3 ところで、債務者国鉄の東京南鉄道管理局(以下「南鉄局」という。)と東京地本との間には昭和五六年三月三一日付けで「東神奈川電車区配置車両の蒲田電車区移管に伴う労働条件に関する確認事項」(以下「本件第一協定」という。)、「東神奈川配置車両の蒲田電車区移管に関する協定」(以下「本件第二協定」という。)が締結されているところ、本件第一協定には第一項に「横浜線車両のATC特性検査は、東神奈川電車区で実施する。」、第三項に「東神奈川電車区の臨時検査は通常の小臨修のほか、ドアーの一斉検査・修繕、側引棒の手入れ、暖房・扇風機等の切換えを含め、横浜線に発生する小臨修を実施する。」との記載があること、本件第二協定には第一〇項に「配置転換にあたっては、本人の意向を十分尊重する。」との記載があることは当事者間に争いがない。
そこで債権者らは、まず本件各配転命令の理由となっている東神奈川電車区における前記業務移管が本件第一協定の前記各確認事項に違反するものであるから本件各配転命令も違法であると主張するところ、なるほど本件第一協定が標題として「労働条件に関する」ものである旨明示していることや、一件記録によると前記各確認事項が南鉄局と東京地本との団体交渉の場で妥結したもので、しかもその交渉の過程において当局側が「確認事項第一項でいう東神奈川電車区で実施するとは、東神奈川区職員が行うことの意であるが、よいか」との問いに対して、組合側が「了解」と回答していることが一応認められるから、本件第一協定の前記各確認事項に労働協約たる性格が存していることは否定し難い。しかしながら、右各確認事項の趣旨は、東神奈川電車区の検修業務を担当する職員がいかなる検査、修繕等の業務を行うのかに関して具体的に協定されているという意味での同電車区の職員の労働条件が規定されているにすぎず、右各確認事項から直ちに債務者が将来にわたり同電車区に検修業務部門を存続させるべき義務を負うとするのは疑問である。すなわち、右各確認事項は、同電車区に検修業務部門が存在している限度で同業務を担当する職員の労働条件を規定したものというべきである。さすれば、本件各配転命令の如く債務者における作業効率等業務上の必要性から同電車区の検修業務部門を他の電車区に移管することに伴う配転命令は、右各確認事項の適用されるべき事態と範囲を異にしているといわざるをえず、従って、本件各配転命令に債権者らの主張するような本件第一協定違反の問題は生じない。
また、債権者らは本件各配転命令が「現地・現職にて働きたい」という債権者らの意思を全て無視するものであって本件第二協定第一〇項に明白に違反すると主張するところ、一件記録によると、本件各配転命令に先立ち債権者が行った転勤、転職に関する希望調査において債権者らがいずれも「現地・現職での勤務」を希望していたことが一応認められるものの、本件各配転命令はそもそも前記のとおり業務移管に伴うものであるから、債権者らの希望する「現地・現職での勤務」はありえないものであり、その意味では債権者らがこれに固執することは債務者に不能を強いるに等しく、債務者の立場からは未だ債権者らから尊重に値する配転希望地等「配転に関する意向」を示されていないといわざるをえず、従って、本件各配転命令が債権者らの「現地、現職にて働きたい」との意思と相異することをもって直ちに本件第二協定違反とすることはできず、この点に関する債権者らの主張も採用できない。
更に、債権者らは本件各配転命令が国労の方針である債権者国鉄の「分割・民営化」阻止の運動をもっとも原則的に実践してきた分会を弱体化させることを狙った労組法七条一号、三号に該当する不当労働行為であると主張するが、一件記録によるも本件各配転命令に債権者らが主張するが如き不当労働行為の意図を窺わしめるに足る疎明はない。
そして他に本件各配転命令が権利の濫用、信義則違反により無効であるとすべき事情も何ら存しない。
4 よって、債権者らの本件仮処分申請は被保全権利について疎明がないというべきであり、保証を立てさせて疎明にかえることは相当でないから、本件申請を失当としていずれも却下することとし、申請費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 小池喜彦)
当事者目録
債権者 小板橋近夫
(ほか四三名)
右債権者ら代理人弁護士 横山国男
(ほか一四名)
債務者 日本国有鉄道
右代表者総裁 杉浦喬也
右代理人弁護士 鵜澤秀行
同代理人 鈴木寛
(ほか二名)